ファストフード店には脱プラへの”ファスト”な対応が求められている?-プラスチック vs 紙-

あっ、
コンビニでお会計をしたとき、お店でドリンクを頼んだとき、私たちはある変化に気づくことが多くなりました。

その変化とは「使い捨てプラスチック製品への規制

皆さんもご存知の通り、2020年7月からレジ袋の有料化がスタートし、エコバックを持っている人をよく見かけるようになりました。 また、外出時ドリンクを頼むと紙ストローで提供された経験がある方も多いのではないでしょうか。

この使い捨てプラスチック削減の波は飲食店にも訪れています。

2018年、すかいらーくグループ(バーミヤン、ジョナサン、ガストなど)ではドリンクバーに常備されていた使い捨てプラスチック製ストローを廃止しました。

そしてマクドナルドが今年の2月より一部の店舗で使い捨てプラスチック製品を木製や紙製に代替することを発表しました。

プラスチック製品は、耐久性があり水にも強く便利に使い捨てできることから、ファストフード店でもよく使用されています。

しかし、そんなファストフード店でもなぜ使い捨てプラスチックが削減され始めたのでしょう。
その理由を一言でいうと「プラスチックが与える環境への負担が無視できなくなった」から。

そこで今回は「どうしてファストフード店がプラスチック削減をし始めたのか」をマクドナルドの取り組みから見ていきましょう。

この記事では

  • ファストフード店がプラスチック削減をする意味
  • 使い捨てプラスチックの問題点
  • 使い捨てプラスチック規制の矛盾

を紹介しています。

「どうして便利なプラスチックが規制されてるの?」
「プラスチックが環境に与える負担って何?」
「プラスチックより紙が環境に良いのはどうして?」
これらのモヤモヤを解消することで、「私たちの社会がいま何を目指しているのか」が見えてきます。


マクドナルドでの取り組み

そのリーズナブルさと手軽さで大人気のマクドナルド

実はマクドナルドでは、地球環境に配慮した取り組みが推進されています。
例えば、マクドナルドはハッピーセットに付いてくるプラスチック玩具を回収し、再製品化するなど、さまざまな環境保護への対策がとられています。

そんなマクドナルドで、新たな取り組みが始まります。
それが2022年2月より始まる「神奈川県内の30店舗での紙ストロー、木製カトラリーの導入」です。
ストローの紙、カトラリーの木材の原料には「FSC認証材」と呼ばれる森林環境に配慮して作られたことが証明されている製品を使用しています。

そのマクドナルドの新たな取り組みを後押しした大きなきっかけの一つが
2022年4月から施行される予定の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法関連)」に記載されている「ワンウェイプラスチックの使用の合理化」です。

ワンウェイプラスチックとは
一度使用した後に廃棄されることが想定されるプラスチック製品
のこと。

これには主に飲食店でお持ち帰りしたときに提供されるプラスチック製のストロー、スプーン、フォークが含まれます。
そんなワンウェイプラスチックの無駄をできるだけ少なくして、必要な分だけ提供しよう、という法律が今年の4月から施行されます。

マクドナルドはこのワンウェイプラスチックの削減へ向け、紙ストローや木製カトラリー導入の全国展開を目指しています。

マクドナルドによると、全店舗で「木製カトラリーや紙ストロー」を導入した場合、プラスチックの使用量は年間900トン削減できるそうです。

2020年、マクドナルド店舗で廃棄されたプラスチックは約5,700トン。この計算にはテイクアウトなどで持ち帰られたプラスチックの数字は含まれていないため、実際にはこれ以上のプラスチックゴミが消費されています。

このプラスチックの大量廃棄の理由は、プラスチック製品の軽量で丈夫、水を通しづらい性質がファストフード店などの食品・消費財産業で重宝されているからです。

実際、食品・消費財産業から排出されるプラスチックは全世界の25%を占めます。
加えて、2019年、日本では食品産業から出るプラゴミ(包装・容器等/コンテナ類など)は年間約900万トンありました。

そもそもプラスチックにはどのような問題があるのでしょう?

気候変動
多くのプラスチックは石油由来です。石油を含むプラスチックを燃やすと、地球温暖化の原因となる温室効果ガスが発生します。廃プラスチックの燃焼時に伴うCO2の排出量は、全国で**年間約 2,000 万トン。これは**日本の温室効果ガス排出量の1.5%に相当します。2022年1月14日オーストラリア西部では気温50.7度を記録するなど、気候変動の問題は年々深刻さを増しています。

諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応
汚れが付着しているなどの理由でリサイクル不可な廃プラスチックは「資源」という名目のもと日本から海外に輸出されています。しかし2017年度より始まった「使用済プラスチック等の輸入禁止措置等」の影響で、これらの廃プラスチックの輸出は規制されるようになりました。それにより国内の産業廃棄物処理はひっ迫状況は悪化し、廃プラスチックは行き場を失っています

海洋汚染問題
海に捨てられている約66%のゴミがプラスチックと言われています。海に流されるプラスチックゴミは年間で約800万トン。これはジャンボジェット機の機体の重さに変換すると1年間に5万機分の重さのプラスチックが海に流れ込んでいることを意味します。その内、日本から海へ流れる量は年間で6万トン。マイクロプラスチック(紫外線や波によって細かく砕かれたプラスチック)の回収はほぼ不可能な上に、海洋生物が誤飲してしまうなど、死因の一つとなっています。(マイクロプラスチックについて詳しく知りたい方は「私たちは1週間にクレジットカード1枚分もの プラスチックを食べてる」をチェックしてみてください。)

驚くことに、海に流れている廃プラスチックの約8割は、私たちの暮らしている街から来ています。街でポイ捨てや投棄されたゴミが水路や川に流れ出し、やがて海へとたどり着いていることが明らかになっています。

プラスチックは自然環境に流れ込むと、数百年間分解されずプラスチックのまま残ります。
想像してみてください。
ファストフード店でドリンクを頼み、数十分〜数時間だけ使ったプラスチックストロー。 

そのプラスチックストローは海に流れ込むと、約200年海洋ゴミとして存在し続けます

私たちはその事実を理解し、これからプラスチックとどのように暮らしていくのかを考えなければいけません。


プラスチック規制は矛盾している?

ここまでプラスチックの問題点を挙げました。

しかし「他のプラスチック製品は使われているのに」や「紙ストローも環境に悪いんじゃないの」など、脱プラスチックの動きへ矛盾を感じている人もいると思います。
そこで、プラスチックストローに焦点を当てたとき、浮かぶ上がる疑問とそれに対する答えをまとめました。

他のプラスチック製品が使われているのにプラスチックストローを規制するだけじゃ意味がないんじゃないの?

  • 環境保護への第一歩となる
    確かにプラスチックストローの使用を禁止する”だけ”では、環境に大きな影響を与えることはできません。しかし、プラスチックストローが海に約200年残り続けることを考えると、プラスチックストローの規制は環境保護への第一歩となります。さらに、プラスチックストローを使用する人が減少すればするほど、このステップは大きな意味を持つようになります。

  • プラスチックが起こす影響に対する認識を高める
    重要なのは、プラスチックストローの規制は、「他の使い捨てプラスチックとその環境に与える影響に対する社会の認識を高めることができる」ということです。「なぜプラスチックの使用が規制され始めているか」と言う目的を知らないままだと、環境に影響を与える他の使い捨てプラスチックを使い続けてしまいます。 そこで、マクドナルドのような全国展開しているファストフード店がプラスチック削減へ前進することで、他の使い捨てプラスチックの使用を減らすよう、人々を促すことができます。「プラスチックの環境に与える影響」についての認識が高まれば、プラスチックストロー使用の禁止に留まらない、環境への貢献ができるようになります。

紙ストローも環境に悪いんじゃないの?

  • 紙ストローは自然分解される
    紙ストローはプラスチックストローと違い、自然に分解され、土の中の有機物に戻ります。先ほど記述した通り、プラスチックはポイ捨てなどによって海に流れ込み海洋汚染問題などを引き起こしています。もし、ポイ捨てされる状況が改善されないのなら、自然で分解される紙ストローの方が環境にとって負担の少ない選択肢となります。

  • 二酸化炭素の排出
    プラスチックストローは廃棄され焼却されると有毒ガスが発生するのに対し、紙ストローは発生しません。そういった点では、紙ストローはプラスチックストローよりも環境に与える負担は少ないです。 しかし、紙ストローも環境へある一定の影響を与えている場合があります。例えば、紙ストローの質量はプラスチックストローよりも重いため、輸送時のエネルギー(CO2)の排出量が多くなります。また、プラスチックストローと同様使い捨てであることには変わりがないため、焼却時にはCO2が排出されます。

  • 森林伐採の問題
    紙製ストローの原料となる木は二酸化炭素を吸収し、さまざまな生物を守る役割も果たす非常に貴重な資源です。よって、紙ストローは環境・生態系の破壊の原因になるかもしれません。そのため、マクドナルドのように再生可能な「FSC認証材」を使用したり、サステナブルな生産プロセスからできた紙ストローが必要です。

プラスチックストローを使わないことによるデメリットは?

  • 一部の障がい者の方がドリンクを飲むことができない
    一部の障がい者の方にとってプラスチックストローは、安全に飲み物を飲める唯一の選択肢である場合があります。弾力性のない紙ストローの使用が難しかったり、硬いシリコン製や金属製のストローは、噛む力をコントロールすることが難しい人にとって危険なものになります。もし企業がプラスチックストローの提供を完全に規制してしまうと、これらの消費者の体験が制限される可能性があります。

このように紙ストローは、プラスチックストローよりも「より良い」選択肢です。 しかしそれと同時に、長期的に見ると紙ストローも「ベスト」な選択肢とは言えません

環境にやさしい最善の解決策は「使い捨てのアイテムの使用を控え、再利用可能なアイテムを選ぶ」ことです。

プラスチックが自然に分解されないように、プラスチック問題は放置していても解決されません。
企業と消費者の私たちが手を取り合いプラスチック削減に取り組むことで、サステナブルな社会を目指すことができます。


マクドナルドが全店舗で「木製カトラリーや紙ストロー」を導入するだけで、年間900トンのプラスチックが削減でき、その削減効果は大きなものとなります。

このように、プラスチック問題は私たち個人の問題であると同時に、企業の巨大な力が関係しています。

資本主義は、私たちに絶え間なく物を消費する状態を当たり前にしました。 そこで、私たちは何かを消費するとき少し立ち止まり「なぜこの商品を使い、これがどのような結果をもたらす可能性があるのか」を考える必要があります。

もし環境に影響を与える商品を買わなくなれば、環境汚染のスピードは低下していきます。
現在のペースでプラスチックが廃棄されると、2050年には海に魚よりもプラスチックの方が多くなることが予想されています。

マクドナルドの取り組みは、プラスチック汚染について消費者と企業が話し合い、環境保護について考えるきっかけとなります。

これから先、プラスチックの規制は進んでいくでしょう。
そんなときあなたが立ち止まらないために、今こそプラスチック問題について理解を深めましょう!

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- マハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)