サステナビリティとは?- 考えることから始めるサステナブルな暮らし -
「sustainable (サステナブル)」や「sustainability (サステナビリティ)」
最近よく目にするようになったこの言葉たち。
「なんとなくしか意味が分からない」
「エコのこと?」
「どうして紙ストローやプラスチックの削減がサステナビリティにつながるの?」
そんな疑問を抱いたことはありませんか?
そこで今回は「サステナブル」や「サステナビリティ」がどういう意味で何を目指しているのか、についてお話していこう思います。
最初にお伝えしたいのは「サステナビリティ」とは
- 私たちがこれからも快適な生活を送るために重要な概念であること
- 単なる環境問題ではなく、社会的な課題であること
- 毎日の小さな選択がどのような影響を及ぼすのかを理解するための思考のプロセスが軸になっていることです
これまで馴染みのなかった 「サステナビリティ」が意外に身近で、誰でも共感できる概念だということがわかっていただけると思います!
サステナビリティの意味
Sustainable (サステナブル)とはSustain (持続する)とable(可能な)が合わさった英単語。「持続可能な〇〇」という風に使われます。
Sustainability (サステナビリティ)とはその名詞形で「持続可能性」を意味します。
ではこの「持続可能」とはどのような意味を持つのでしょうか?
国連が発表したブルントラント報告によると「持続可能性」とは
将来の世代のニーズを損なうことなく、現代の私たちが生きる社会のニーズを満たすこと
簡単に言えば、「地球の自然サイクルの中で、人間社会が一定のレベルで継続できる能力」を意味します。
そして「ニーズ」とは、「現在と未来の世代の地球規模での幸福」を指します。
つまり、「人間社会がこれからも繁栄し、すべての人が幸せに暮らしていくこと」です。
ポイントになるのは、「持続可能性」と「環境保護」が絶対的イコールの関係ではないこと。
なぜならサステナビリティとは、「環境保護」「社会的発展」「経済成長」の3つの要素すべてを考慮する総合的なアプローチだから、です。
まず、 3つの要素を一つずつ見ていきましょう。
サステナビリティを構成する3つの要素
出典: What is Sustainability?. UCLA Sustainability. https://www.sustain.ucla.edu/what-is-sustainability/
1. 環境保護
💡 生態系の健全性が維持され、地球上のすべての環境システムのバランスが保たれている一方で、その中の天然資源が人間によって消費されても、自然に補充される速度であること。
地球にはさまざまな資源があり、私たちはそれらを消費すると同時に補充し続けることで社会的・経済的に発展できます。
ところが現在、グローバリゼーション、工業化や人口の増加などの影響により、消費スピードが補充されるスピードを超過しています。その結果、天然資源を含むさまざまな資源が枯渇の危険に直面しています。
例えば、樹木が成長するスピードを無視し、森林を伐採することは森林の減少や劣化につながります。森林破壊は異常気象、大気汚染、生態系の破壊や生物の絶滅など環境システムのバランスを崩し、再生不可能な状態を招く場合があります。
2020年8月から2021年7月の約一年間だけでも、アマゾンでは10,476平方キロメートルの熱帯雨林が失われました。この面積は、東京ドーム(0.468 km2)22個分、また岐阜県の大きさ(10,621km2)にほぼ一致します。
サステナブルな消費行動や生産プロセスを取り入れることで環境保護に取り組み、私たちが生きていく地球を守っていくことが求められています。
2. 社会的発展
💡 すべての人が普遍的な人権と基本的な生活必需品を手に入れることができ、家族や地域社会の健康と安全を維持するために十分な資源を手に入れることができること。
健全なコミュニティには、個人の権利、労働者の権利、文化的権利が尊重され、すべての人が差別から守られることを保証する公正なルールが必要です。
これは簡単に言うと、すべての人があらゆる形態の差別を受けることなく、権利の尊重、幸せな生活を送れるだけのお金やサポートを受けれることを意味します。
しかし実際には、貧困問題やグローバル化の元で安価な労働力の需要が増加したことで多くの人の権利が蔑ろにされています。
国際労働機関(ILO)とユニセフの調査によると、2021年6月時点で児童労働に従事している子どもの数は世界で1億6,000万人。これは過去4年間で約840万人も増加しており、また新型コロナウイルスの影響でさらに数百万人の子供たちが児童労働の危機にさらされています。
これらの子どもたちは児童労働に従事することで十分な教育の機会が奪われています。加えて、彼らの労働環境の多くが危険であり、給与は成人男性の半分であるなど、子供に身体的、社会的、精神的、道徳的に悪影響を与えています。
サステナブルな社会には、より多くの人が健康で幸せな日々を過ごすために、それを可能にする体制や法律、人々の協力必要です。
3. 経済成長
💡 地球上の人間社会が将来にわたって継続できるだけの収入を生み出すと同時に、利益だけではなく持続可能性の他の要素を考慮した経済システムを試みること。
経済的な成長のみに尽力した場合、環境保護や社会的発展などの要素が無視されることが多いのが現状です。その結果、需要と供給のバランスが崩れ、森林破壊や児童労働などの悪影響が連鎖的に発生します。
ファストファッションは低価格で流行りの商品を提供しており、多くの人がその手軽さやバラエティを楽しんでいます。多くのファストファッションブランドは、短期間のサイクルでの生産・販売を低コストに抑えるため、発展途上国に生産拠点を置いています。
しかしサプライヤー工場では、働く人たちの人権が軽視されたり、安全管理の欠陥、低賃金など、さまざまな問題が指摘されています。加えて、ポリエステル汚染による川や湖、海への影響や、大量の余剰在庫や廃棄物など、環境汚染問題も無視できないのが現状です。
人間社会がこれからも発展していくためには、経済成長は必要不可欠です。
しかし、環境問題や人権問題を顧みない経済システムは短期的にはプラスになるかもしれませんが、長期的に見るとマイナスになります。
私たちには生きていく地球があり、働く人がいるからこそ、経済的に成長ができます。
持続可能な社会にとって、持続可能性の他の要素を考慮した経済システムは欠かすことのできない要素です。
以上がサステナビリティを構成する3つの要素です。
しかしサステナビリティとは、単純にこれら3つの要素を別々に達成していくことではありません。
「私たちが何か選択をするとき、これら3つ(環境保護・社会的発展・経済成長)がどのように繋がっているのかを理解すること」が非常に重要になってきます。
考えることから始まるサステナビリティ
サステナビリティにおいて、「3つの要素(環境保護・社会的発展・経済成長)がどのように繋がっているのかを理解する」とはどういうことなのでしょう?
パーム油の例を使って考えてみましょう!
出典:'It’s up to us': why business needs to take a stand on palm oil. The Guardian. https://www.theguardian.com/sustainable-business/2017/jun/26/palm-oil-business-consumers-sustainability-indonesia-leuser-mondelez-marks-spencer-lush
パーム油は熱帯地域でのみ栽培されるアブラヤシの果実から加工された植物油です。
このパーム油は非常に生産性が高く、他の植物油に比べてはるかに低いコストで生産できることから、現在、世界中でパーム油の生産量と需要は急速に増加しています。
その結果、多くの絶滅危惧種の重要な生息地であり、一部の人々が生活を送っている熱帯林が伐採され、完全に失われるなど、人々やさまざまな動物や生物に壊滅的な影響を与えています。
また、農園においても健康や安全面の配慮が乏しい労働環境や低賃金であるなど、さまざまな社会的公正が無視されていることが問題になっています。
日本に住む私たちには、これらのパーム油の問題は関係がないように思えます。
しかし実際、日本国内でのパーム油の消費量は80.5万トンで世界第17位。日本人一人の1年間の消費量は約5kgに上ると言われています。
パーム油が使用される代表的な商品は、ポテトチップスやアイスクリーム、石鹸や化粧品など、私たちが日常的に無意識に消費しているものばかりです。
しかしだからといって、今すぐポテトチップスやアイスクリームを食べず、石鹸や化粧品を使わない!というのはあまりにも現実的ではありません。
ここで重要なのは、パーム油自体の問題ではなく、その生産プロセスに問題があるという点です。
ある企業がパーム油に代わるサステナブルな植物油を使用した商品を生産したとしても、もし私たち消費者がパーム油を使用する企業の商品を支持した場合、環境問題や人権問題に関心のない企業のみが利益を得ることになります。
そうすると、企業はサステナビリティを実行する必要性やニーズを認識せず、環境破壊や人権侵害を繰り返す企業がその生産プロセスを拡大していきます。
私たちはコンビニで購入したポテトチップスが海外の熱帯林に影響を与えているなんて考えることはほとんどないと思います。
しかし、このような小さな選択の連続が結果的にどのような影響を及ぼすのか考えることは、結果的に熱帯林に住む人々や動物、その農園で働く人々を救うことに繋がります。
そういった意味でも、消費者の私たちは、今の私たちのため、これからの未来のため、サステナブルな生産プロセスを求め、企業が産業のあらゆる側面に責任を果たしているのか確認することが大切です。
つまり「3つの要素(環境保護・社会的発展・経済成長)がどのように繋がっているのかを理解する」とは、
💡 私たちの毎日の生活の中での選択は、他の地域や人々の現状、また次の世代にどのような未来を残そうとしているかの選択であることを理解すること。
それがサステナビリティの総合的なアプローチです。
「いちいち原材料なんてめんどくさくて見ていられない」という方は、余裕があるとき、いま私たちのする選択が、安心して買い物ができる未来へ向けての大切な一歩になることを意識してみてください!
ここまでのことをまとめると、「サステナビリティ」とは
- 人間社会がこれからも発展し、すべての人が幸せに暮らしていくための考え方
- 達成するためには、3つの要素(環境保護・社会的発展・経済成長)の繋がりを理解することが必要
- 生活の中での選択の連続が他の地域や人々、将来の世代に影響していることを認識すること
今までの生活様式やパターンを見直し、一気にそれらを変更できる人はそうそういません。また「全部変えなければいけない」と思うと、サステナブルな生活がとても堅苦しく難しいようで、始める前からやる気を削がれてしまいます。
これまでの日常のルーティーンを変えることは、とても難しいと思います。
意外に「自分の選択がどのような結果につながる可能性があるか」を考えるだけでも、それは地球のため、未来のための大きな意義になります。
10%からでも小さなステップを踏める人が10人、100人、1000人と増えることがこれらからの社会には求められています。
ここまで読んでくださった皆さまの中でサステナビリティに馴染みがなかった人も、買い物に行ったとき、購入する前に今日読んだことを思い出してみてください。
より多くの人がこれらかも幸せに暮らせる社会を目指して、自分ができそうなことから取り入れてみましょう!